昔、岡山勝田郡に、大変お人好しの馬子(馬方)と大変ナマケモノの馬がいました。この馬は、荷物や人を乗せて運ぶのが仕事なのですが、気が向かなければその場に座り込み動かなくなるのです。そんな時は、馬子が自分で荷物を背負って運んでいました。
ある時、知り合いの荷主から頼まれて、塩の荷を乗せて運ぶことになりました。川の浅瀬を選んで渡っていると、馬が川の深みにはまり転んでしまいました。荷物の塩は川の水に溶け出し、すっかり軽くなりました。
それを知った荷主は怒りましたが、次に綿(わた)の荷物を運ばせる事にしました。しかし、荷の中身を知らない馬は「川で転べば荷が軽くなる」と考え、再びやって来た川でわざと転びました。すると、綿が水を吸い込み荷物はますます重くなり、馬は起き上がれなくなりました。
川底に沈みいよいよ死を覚悟した馬でしたが、馬子が小刀で荷をくくった縄を切り、荷物を捨てて馬を助けてあげました。
二度も大切な荷物を流されてしまった荷主は、大変怒って「役立たずの馬め!」と竹の棒で打ち始めました。心優しい馬子は「馬を許してやってくれ」と必死にすがりましたが、逆に荷主から竹の棒でめった打ちにされました。
この様子を見ていた馬は、涙がとめどなく流れ出し心から反省しました。こんな事があってから、この馬も素直に働くようになりました。そうして、流された荷物の代金もきちんと弁償し、二人仲良く働いたという事です。
(紅子 2012-11-2 0:30)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 岡山県 |
場所について | 岡山県勝田郡(地図は適当) |
このお話の評価 | 8.60 (投票数 5) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧