昔、静岡の海の近くにある泰定庵(たいじょうあん)というお寺に、とても大食らいのお和尚さんがいました。
近くの浜は大変賑やかで、毎日大漁旗をあげて、沢山の魚を積んだ大きな船が出入りしていました。しかし実際のところ、大漁で儲かっているのは船を所有している網元だけで、村人たちは過酷な労働をするばかりでちっとも楽ではありませんでした。
それを知った和尚が網元に抗議すると、網元は「大食いの弟と餅の食べ比べをして勝ったら、和尚の提案を考えてやる」と持ちかけました。和尚はガツガツと餅を平らげ、大男の弟との食べ比べにどうにか勝利する事ができました。
しかし、網元は「考えてやると言っただけで約束はしていない」と和尚をやり込めました。その代りに賭けをしようと言いだし、「相良から江戸までの旅の間、何も食べずについてこられたら、村人たちを楽にしてやろう」と証文を書きました。
七日七晩、和尚は網元の仕掛ける食べ物の誘惑に打ち勝ち、何も食べずに江戸までたどり着くことができました。江戸についた和尚は、証文を高々と掲げて、うまいと評判の高級料理50人前を平らげ、村人たち用に沢山のお土産を買わせました。
こうして賭けに勝った和尚は、意気揚々と村へ帰り、これにすっかり懲りた網元が心を入れ替えたので、浜はますます栄えたそうです。
(紅子 2012-9-21 0:16)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 静岡県相良町 |
DVD情報 | DVD-BOX第9集(DVD第42巻) |
場所について | 泰盛寺(たいせいじ) |
本の情報 | 国際情報社BOX絵本パート2-第077巻(発刊日:1980年かも)/講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第45巻(絵本発刊日:1986年01月15日)/講談社テレビ名作えほん第063巻(発刊日:1986年10月) |
絵本の解説 | 原話は「泰定庵の大食い和尚」といって、静岡県相良町の泰盛寺(たいせいじ、当時は泰定庵たいじょうあんだった)に伝わる大食い和尚さんのお話です。当時、村の人々は漁業で生計を立てていましたが、強欲な網元に泣かされ、暮らしはいっこうに楽になりませんでした。それを知った和尚さんは網元に抗議に行き、食べ比べに挑戦。さらには、何も食べずに江戸まで行き、ついに要求を通すことに成功したのでした。得意の大食いで相手をやっつけるというのは愉快ですが、昔は、このように地域社会のリーダーとして自ら行動を起こす気概のある和尚さんが、少なからずいたものでした。(静岡地方の昔ばなし)(講談社のデラックス版絵本より) |
講談社の300より | 書籍によると「静岡県のお話」 |
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