返信する: 各話のコメント
日滝の笛 についてのコメント&レビュー投稿
昔、信州の須坂の城下に、日滝という小さな村がありました。働き者だが貧しいこの村の人々は、春と秋のお祭りを何よりも楽しみにしていました。このお祭りに欠かせないのは、笛の名...…全文を見る

題名:
ユーザ名
投稿本文

オプション


以下参照(以下のコメントに対して返信しようとしています)
Re: 日滝の笛
投稿者: ゲスト 投稿日時: 2015/10/10 20:20

日滝の笛
ずっと昔、日滝の高橋に、おばあさんがひとりで住んでいました。
「今年の秋祭りは、どうなることかのう。」
おばあさんは、黒光りした横笛をなでながらつぶやきました。
どうしたことか、今年も二年続きの凶作でした。夏になると、雨らしい雨が降らず、稲は立ち枯れる所さえでたのです。
そんなわけで、殿様から、金のかかることは差しひかえるようにおふれがでていたのです。でも春には、食べ物を待ち寄ってこっそりと祭りをしました。ところが、殿様の耳に入りひどいお叱りをうけました。 おばあさんは、笛にむかって、
「また、おまえの出番がなくなったな。」とさびしそうに、語りかけました。
殿様のおふれは、いっそうきびしくなっていたのです。

それは、秋の取り入れもすんだ昼さがりのことでした。
突然降りだした雨とともに、戸をこじ開けるようにして、ふたりの男が入ってきました。
「だのもう。たのもう。」
でっぷりと太った男が、くちびるをふるわせて叫びました。
「何か御用かのう?」
「狩りの途中だが、雨に降られて困っておる。ちょっと休ませてくれ。」
鼻筋のとおったひげの男が、顔のつゆをはらいのけて言いました。
男たちは、りっぱな弓矢を持っていましたが、その身なりは、まるで野武士そっくりでした。
「これは、まあよくきてくださった。寒かったろうに、茶のいっぱいでも飲んでくんなして。」おばあさんは、そういいながら奥へ入っていきました。
ひげの男は、米俵の上に、ぬれた体を横たえるようにして、腰をおろしました。
まもなく、おばあさんは、でてきましたが、その男をみると、
「なんだ。それは!」と、男をつきおとしてしまいました。
「なにをする。この無礼者!」太った男が、刀に手をかけました。
「何をいいなさる。」おばあさんは、しんばリ棒を振り回して、あっというまに、二人を雨の中にたたきだしました。

それから、二、三日して、おばあさんは、須坂の殿様から、呼びだされました。
おばあさんは、びくびくして、屋敷の庭先にひざまずいていました。何で呼びだされたのか、さっぱりわけがわからなかったのです。
まもなく、太鼓の音が鳴り響き、白いふすまが静かに開きました。
「そこの者、おもてをあげい。」おばあさんが、おそるおそる顔をあげました。
すると、そこには殿様が、家来をしたがえて、座っていました。
「ところで、この顔に見覚えはござらぬか。」そういわれて、おばあさんは、天地が避けるほどびっくリしました。その殿様こそ、あの米俵の男でした。
「ヘーい、ごかんべんのばどを。」おばあさんは、打ち首を覚悟しました。
「いや、責めているのではござらん。なぜこのわしを追いだしたのか、そのわけを間こうと言うのじゃ。」
「遠慮せずに申せ。なぜ、あのようなひどいことを、このわしにしたのじゃ。」
「ヘーい。」
「申せ。」
「はい。お米は、汗水たらして働いた、わしらの命でございます。そのお米の上に座られましたので、あまりに心ない者だと思いましたもので。」
「なるばどー。米こそ、我らの命とはな。いや、わしが悪かった。」
殿様は、深いため息とともに言いました。
「もったいないことでございます。」
「わしは、お前に、人間として忘れてはいけないことを教わったようだ。礼を言うぞ。」
「そんな……。」 
「そのかわりといってはなんだが、そちに、褒美をつかわそう。なんなりと申せ。」
おばあさんは、自分の耳を疑いました。だまっていると、
「えんりょはいらんぞ」とわきの家来が、口を添えました,
「はい。では、祭りをさせていただきとうぞんじます。」
「なに、祭リだと? お前に褒美をくださるというのだ。」家来が、また口をいれました。
「祭りは、わしらのいちばんの楽しみでございます。祭りをやってこそ、いっそう仕事に身がはいろうというもの。」
「うーむ。もう、冬が来るのに、祭りをしたいとはなあ。」
「はい。」殿様は、しばらく考えていました。
「よい。わかった。あのふれはとりやめにするとしよう。」
「本当でございますか。」おばあさんの顔ははればれとしました。

やがて日滝の森に、のぼりが立ちました。そして、白いものが舞いはじめると、祭りは最高潮にたっしました。舞台で、おどりくるう子どもや、村人にあわせて、おばあさんは、笛をふき続けました。その笛の音は、すっかり白くなった妙覚山のいただきまで、響いていったということです。

信濃教育会出版部より
作・羽生田 敏
さし絵・丸山 武彦
採集地・日滝
長野県 長野地方事務所 長野広域行政組合刊 長野地域民話集昔々あるところより
http://www.kitashinanoji.com/minwa/naganochiku/suzaka/hanashi/hidakinofue.html

現地関連情報
出典本調査 facebook
Twitter

オンライン状況

25 人のユーザが現在オンラインです。 (8 人のユーザが レビュー&コメント投稿 を参照しています。)

新着コメント(コメント24件)